この作品を一言で表すとしたら・・・「熱血妖怪退治もの少年漫画」とでもいうのでしょうか。
物語の始まりを説明するには、わたしが書くよりコミックス第1巻背表紙に簡潔にまとめられているので、そちらを引用させていただくと、
「蔵の中に、500年も閉じこめられていた妖怪。ヤツはその昔、人を食い、悪行の限りを尽くしていた。ひょんなことからヤツを解き放ったのが、蒼月潮。うしおはヤツにとらと名づけた。」
潮はお寺の息子の中学2年生。妖怪のとらは、蔵の中に、妖怪退治の槍、「獣の槍」で封印されていたのですが、それを潮が抜いたために解放されてしまったのです。そのときのやり取りからとらは潮を恨み、とりついて隙あらば潮を食ってしまおうと考えるのですが、「獣の槍」を持つ潮にはかないません。それどころか、槍のせいで潮はたびたび妖怪たちと一戦交えることになり、他の妖怪に潮を食われるわけにはいかないと、とらも結局潮を助ける羽目になる。
こうして妖怪退治コンビが誕生するわけです。
ここまでだと、結構今までにもありがちな妖怪退治ものなのですが、やがて物語は、潮自身の出生の秘密と、「獣の槍」最大の敵「白面の者」との戦いへ、大きく動いていきます。
わたしがこの作品と出会ったのは何と大学生のとき。夏休みにアルバイトで本屋にいたとき、コミックの棚の整理をしていて見つけた、「うしおととら」という奇妙なタイトル、そして上記の裏表紙のストーリー説明が気になっていました。
ちょうどその頃歯医者に通っていて、待合室にたまたま少年サンデーがあり、連載中の「うしおととら」を見て、なかなかおもしろそうだと思い、とうとう単行本を買ったのです。
最初の１、２巻は普通に読んでいただけでしたが、そのうちだんだんとのめりこむようになりました。
その理由も、どのあたりからかも、はっきりしています。
単行本で言うと、５巻になります。詳しいストーリーは説明しませんが、この巻で潮は、人間に住みかを追われたために人間を襲うようになった、妖怪「かまいたち」と出会います。
人間を恨む言葉を吐きつづけるかまいたちに対し、潮はどうしたか。
彼は涙を流しながら、「わるかったなあ、つらかったろうなぁ。」とあやまったのです。
…なんだ、そんなこと当たり前じゃないか、と思われるでしょうが…
彼が直接、自然を破壊したわけでも、妖怪たちのすみかを奪ったわけでもありません。（そのことは、とらにも言われます。）けれど、潮は妖怪たちの苦しみを自分の幼い頃の体験と重ね合わせ、深く悲しんだのです。何かに対して共感し、同情できる…そんな当たり前に思えることが欠けている子供が、増えているといわれる昨今、彼のようなキャラクターはひどく新鮮に感じられたのでした。
変な話ですが、わたしはこの少年にホレました。
当時、少年ジャンプなどで「ドラゴンボール」や「幽遊白書」など少年を主人公とした漫画はいくつも連載されており、それぞれ人気を集め、わたしも好きでよく読んでいたのですが、どこか殺伐とした印象を否めないでいました。どれも戦いが、強くなることが目的で、それを楽しむキャラクターばかりだったように思います。
そんなときに見た潮の行動にある意味、衝撃を受けてしまったのでした。
このように書くと、ただ暗い少年のように思われるかもしれませんが、彼は基本的に明るく、元気な少年で、一方で少年らしく悩んだりもします。そして悩みながらも確かに成長し、強くなっていきます。そのアクションは妖怪退治もののおどろおどろしさと同時に胸のすくようなかっこよさがあります。
キャラクター投票では、もう一人の主人公である妖怪の「とら」に人気がありましたが（もちろんとらも好きですが）、わたしが作品として好きになったきっかけはこの潮の存在でした。
アニメビデオ化されたのですが、原作の最初の方を読みきりのような形で製作しただけなので、本編の大河ストーリーはまったく含まれていません。
個人的には、これこそＴＶアニメ化してほしかったです！ビデオの出来がなかなかよかったので、あのレベルで、原作のストーリーをそのままやってくれたら、うれしかったのになー。
「うしおととら」に続くサンデーの連載作品です。作者が「うしおととら」や短編で何度か扱った、「からくり人形」をテーマにしています。
が、残念ながらわたしはまだ単行本の２巻までしか読んでいません。
ストーリーやキャラクター的に、うしおととらほどひきつけるものがなかった、と言えるかもしれませんが、連載は長期にわたって続いています。先日立ち読み(^_^;)しましたら、ストーリー展開は途中でかなり大きく変わっているようです。
そのうち、全部読んでから、レポートしたいと思います。
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